先週の競馬
まずは土曜日の1R、エレナバレーで憧れの東京競馬場デビューを果たした藤田菜七子騎手でしたが、3コーナー過ぎで前の馬に接触してつまずき落馬。
右腕を負傷したということで、その日予定されていた残りの6鞍は全て乗り替わりになりました。
前の方のポジションに付けていましたから、後続の巻き込まれる恐れがありましたが、田中勝春騎手のアップタウンガールが巧く避けてくれました。
まぁ、今は全てが勉強ですから、これもいい糧にしてくれることでしょう。
土曜日の福島メインは『福島牝馬S(牝G3)』。
勝ったのは16頭中15番人気のマコトブリジャールでした。
前走で殿(しんがり=最後尾)負けを喫していたし、追い切りのタイムも余り良くなく、福島がとっても得意と言うわけでもありませんでしたから、なかなか馬券的には手が出ませんよね。
鞍上の北村友一騎手は、2013年10月6日の京都大賞典以来の重賞勝利となります。
重賞勝ちがなかった期間を「2年半も」と、見ているだけの人たちは感じると思いますが、実際にはそれよりももっと長い期間重賞勝ちがない騎手の方が多い、そういう世界なのです。
ですから、武豊騎手が1年間G1勝ちがなかった時に「ユタカは終わった」と言った人たちもいましたが、その期間も重賞は度々勝っていましたからね。
また、これまでなかなか乗り馬に恵まれなかった北村友一騎手も、間隔を詰めて重賞を勝てば、騎乗依頼が増える、そこで結果を出せばどんどん勝ち鞍が増えるし、もちろん逆のパターンもあるということです。
日曜日の中山メイン『サンケイスポーツ賞フローラS(牝G2)』はルメール騎手のチェッキーノが中団から、直線一頭違う脚色で抜け出しました。
彼女は本番のオークスでも有力馬の一頭に数えられるでしょうね。
しかし、オークスを回避したメジャーエンブレムの主戦であるルメール騎手が、こうしてオークスの有力馬を手に入れる。
これが競馬なんですね。
一方、京都では『マイラーズC(G2)』が行われ松山弘平騎手のクルーガーが勝ちました。
道中は無理せず後方待機。
最終コーナーもインコースをピッタリ回り、直線最内から鮮やかに抜け出しました。
これも勝ったから好騎乗であり、この勝利で松山騎手は信頼を得て騎乗依頼が増えることと思います。
しかし、内にもぐり込んで前が壁になっていたら、騎乗ミスと叩かれます。
1番人気に推されたフィエロは4着に負けました。
本来はデムーロ騎手が乗るはずでしたが、先週の皐月賞で騎乗停止処分を受けたため、今回は鮫島良太騎手に乗り替わっていました。
鮫島良太騎手は、デビュー2年目の2006年には60勝を挙げて「若手のホープ」と期待されましたが、昨年は8勝にとどまり、今季もここまで2勝と奮いません。
そうなると、単純に「やっぱり鮫島じゃダメだな」と言われます。
ですから、ジョッキーは周りの声なんかに惑わされず、信念を持って自分の騎乗を心掛けることが大切だと思います。
先にも紹介しましたが、武豊騎手が昔ほど勝てなくなったのは事実です。
その理由の一つとして、馬主や調教師筋の間で、“ユタカ降ろし”の動きがあったとされています。
武豊と言う騎手は、周りの声に絶対に惑わされない人だからです。
もう10年くらい前の話だと思いますが、あるテレビ番組で武豊騎手が新人騎手の質問に答えるというコーナーがあり、確か鮫島良太騎手だったかと思うのですが、「掛かってしまった馬をどう御したらいいか?」みたいな質問をしていました(VTRで)。
その時、武豊騎手は「大切なのは、掛かってしまう前に、『あっ、この馬掛かるな』って分かるはずだから、レースに行く前にいろいろ馬に話しかけたり、いつもと違うことをしてみたり、スタート時間まで他の馬から離しておいたり、引っ掛からせないための努力をする方が大事。レースで引っ掛かっちゃたら、無理に抑えずに行かせちゃうのも手ですよね。」みたいなことを言っていました。
そして、鮫島良太騎手(だったと思います)が騎乗した馬が引っ掛かっちゃって負けたVTRを見ながら、「これは…多分、(馬主か調教師の抑えろという)指示ですね。こんな状態で抑えても、勝てないことはジョッキーなら分かりますから。」と言って、指示通りに乗られて惨敗したその馬の次のレースのVTRを紹介しました。
武豊騎手に乗り替わり、スタートから先手を取って行き、ゴール前で後続を5~6馬身突き放して圧勝していました。
そして、「勿体ないでしょう?普通に乗ったら勝てる馬に乗りながら、指示通りに乗って負けて、挙げ句の果てに降ろされて、せっかく巡り逢えたいい馬を武豊に取られちゃう。ダメだよ。レースで乗って馬を勝たせることができるのはジョッキーだけなんだから。それに、レースは始まってみないとどうなるか分からない。(馬主や調教師の)意図は理解しておく必要はあるけど、指示通りに乗ることがジョッキーのやるべき事ではない」と、熱く語っていました。
武豊騎手のこう言う性格、発言、騎乗スタイルを「生意気」と捉える人もいるようで、さきの“ユタカ降ろし”につながっているのかも知れません(あくまでも噂ですが)。
しかし、そんな状況にも一切恨み言を言うわけでもなく、カメラの前ではいつもニコニコ笑いながら、どんな騎乗馬であっても「チャンスはあります」と言い切る。
そして、決して騎乗スタイルを変えることなく、ひたすら騎乗馬の能力を最大限に引き出せる乗り方を追求する。
そんなユタカさんの姿に、何かを感じられるホースマンであり続けたいと僕は望みます。
ただ、好き嫌いはともかく、オッサンたちの吹き溜まりだった競馬が、文化として、スポーツとして市民権を得ることができたのは武豊の存在あってのこと。
「そのことだけは、よ~く覚えておけ」