有馬記念ウィーク特別企画 史上最大のクリスマスショー(2)
3回戦【桜花賞馬と女性騎手によるマイル対決 芝1600m】
西軍ゲートから飛び出したのはマックスビューティ。
追います東軍はメジロラモーヌ。
鞍上はマックスビューティに細江純子、メジロラモーヌには牧原由貴子の同期対決です。
東軍メジロラモーヌは1986年、初の牝馬三冠(桜花賞・オークス・エリザベス女王杯)を達成した言わずと知れた顕彰馬。
その2年後、桜花賞、オークスを圧倒的な強さで勝ち、三冠制覇を目前としながら残り100mでタレンティドガールに阻まれたマックスビューティ。
しかし、桜花賞を勝った時点で、「すでにメジロラモーヌを超えた」と言われたポテンシャルは、一歩も引けを取るものではありません。
「強さという点ではラモーヌだと思うけど、距離だよねぇ…。マイルだったら、マックスビューティに分があるんじゃないかな」(イザイケ先生)。
「それにつきましては、珍しく私も同感ですね、えぇ」(大河原慶次郎)。
「でも、ジュンコちゃんも、ユッコちゃんも、こんな強い馬に乗るの初めてだろうね。」(イザイケ脩五郎)。
そぉですねぇ…細江純子、牧原由貴子、両騎手は勝ち負けとはまた別に、この痺れるような手応えを楽しんでいるかも知れませんねぇ。
さぁ、3~4コーナーの中間地点、両騎手ともまだ持ったまま。
お互い、「勝負は直線」と腹をくくっているようです。
コーナーワークでマックスビューティがリードを取って、直線コースに向いてきます。
細江のステッキに応えてマックスビューティが突き放します。
牧原も懸命に追いますが、メジロラモーヌはまだエンジンがかからないか。
マックスビューティのリードは4馬身から5馬身。
ラモーヌピンチ!ラモーヌピンチ!200を切った!
坂の上りでようやくラモーヌが差を詰めてきた!
しかし、ビューティだ、ビューティだ、マックスビューティが3馬身半のリードを保ってフィニッシュ!
4回戦【無敗馬対決 芝1800m】
さぁ、その差が3馬身半と広がり、東軍にとってはやや苦しい展開になりましたが、4回戦西軍代表は4戦4勝で皐月賞を制し、種牡馬としてもダイワスカーレット、ディープスカイらを輩出する、まさにエリートといったアグネスタキオンです。
鞍上に現役当時コンビを組んでいた河内洋というのも頼もしいところでしょう。
一方、巻き返しを図る東軍は…出ました!8戦8勝の外国産馬マルゼンスキーです!
2着馬につけた平均着差はなんと1・1秒。
多くの競馬関係者が、「あの馬は次元が違うよ」と呆れるしかなかったその強さ。
こちらも鞍上には、唯一この馬の本当の強さを知る中野渡清一です。
「タキオンもいい馬ですよ。でも、格が違いますよ、マルゼンスキーは」(大河原慶次郎)。
おっ、初めてイザイケ先生よりも先に、大河原さんからコメントが飛び出しましたが、格が違いますか?
「違いますねぇ…。タキオンが勝てると思う人は、マルゼンスキーを見たことない人だけでしょう、えぇ」(大河原慶次郎)。
「大河原さんは、当時から絶賛していましたよね。まぁ、私も見てますからね、マルゼンスキーを。次元が違うと思うなぁ…この馬は」(イザイケ脩五郎)。
…と、両解説者が「次元が違う」と口を揃えるマルゼンスキーですが、その差は変わらず3馬身のリードをアグネスタキオンが保っています。
ここで、河内が後ろを振り返り、ややペースを上げながら3コーナーへとカーブを切っていきます。
マルゼンスキーとの差が少し開きました。
初めて走るオーバーシードグラスに戸惑っているのか?
リードを4馬身から5馬身と広げて、4コーナーを回って最後の直線に向いてきた!
中野渡はまだ持ったまま。
河内の左ムチが飛んでタキオンがラストスパート!
そして、マルゼンスキーにもゴーサインが出た!
逃げるタキオンを追って、マルゼンスキーが物凄い脚!
その差があっと言う間に3馬身、2馬身、1馬身と詰まります。
タキオン懸命に粘る!残り100m!
しかし、マルゼンスキーだ!
交わしてリードを1馬身、2馬身と広げてゴール!
強い!!
5回戦【大障害決戦 障害4250m】
さぁ、逆転に成功した東軍、続きましては暮れの名物レース中山グランドジャンプのコースを使っての障害決戦ということで、1993年から1994年にかけて、東京障害特別と中山大障害をそれぞれ春秋連覇を果たし、2年連続で最優秀障害馬に選出されましたブロードマインドの登場です。
そして、およそ2馬身遅れて飛び出したのが、西軍代表グランドマーチス。
大河原さん、わたくしグランドマーチスのレースを見るのはこれが初めてなんですが、この馬にはどういった印象をお持ちですか?
「そぉですねぇ~。とにかくタフな馬でしたよ。あれは…7歳(現6歳)の時だったか、ねぇ?脩ちゃん。70キロ以上背負ってレースに出た事もあったよね。偉い馬ですよ、えぇ」(大河原慶次郎)。
「そうですね。7歳の秋に72キロで走った事あったなぁ…。まぁ、勝てはしませんでしたけどね。でも、日本の競馬史上、初の獲得賞金3億円馬だし、唯一、顕彰馬に選ばれた障害馬ですからね。伝説だよね」(イザイケ脩五郎)。
なるほどぉ。
一方のブロードマインドなんですが、イザイケ先生はどうご覧になっていますか?
「うん。なんせ、平地でオープンまでいった馬だからね。障害飛越のコツを覚えてからは無敵だったよね」(イザイケ脩五郎)。
…と、お話を伺っている間に、二頭が中山名物のバンケットに差し掛かります。
高低差約3・6メートルの急坂を下り、いったん両馬の姿が画面から消えます。
そして、急坂を駆け上がると、さらに高低差5・3メートルの坂を下って登り、タスキコースを通って逆回りへと入っていきます。
先頭を行きますのはブロードマインドですが、グランドマーチスも直後に迫っています。
ブロードマインド、グランドマーチスともに慣れ親しんだ牧之瀬幸、寺井千万基、両騎手が手綱を取っています。
牧之瀬騎手にとっては、20年前の引退レースでシャイニースターとコンビを組んで有終の美を飾った中山競馬場は、ブロードマインドとの大障害と並んで思い出深い地です。
一方の寺井騎手は、JRAでは非常に珍しい障害競走限定の免許のみを有する騎手で、師匠の伊藤修司調教師が寺井騎手のために障害転向させた馬がいます。
その馬こそ、このグランドマーチスです。
さぁ、大生垣障害でグランドマーチスが先頭を奪います。
しかし、ブロードマインドにはまだ余裕があります。
これから再びタスキコースを通って順周りコースに入ってきます。
第3コーナーに向けての障害も、両馬綺麗に飛越。
残る障害は直線コースのハードルのみとなります。
ブロードマインドの平地の脚を警戒して、寺井がリードを広げていきますが、牧之瀬もこれについて行く。
4コーナーを回って最後の直線コースに入ってまいりました。
最終障害を飛越して、さぁ、ラストスパートです!
グランドマーチスまだ先頭だ。
しかし、やはり平地勝負ではやはりブロードマインドです。
ここで並びます。
グランドマーチスもバテてはいません。
しかし、1馬身半ほどブロードマインドが先着!
その結果とは関係なく、過酷なレースを終えた両馬に、場内から温かい拍手が送られています。