有馬記念ウィーク特別企画 史上最大のクリスマスショー(4)

9回戦【因縁のステイヤー対決 芝3600m】

東軍ゲートから飛び出したのは…1992年の菊花賞でミホノブルボンの三冠を阻み、1993年の春の天皇賞では、メジロマックイーンの三連覇を阻止した“東のヒットマン”ことライスシャワーです。

西軍からはもちろん、雪辱を期すこの馬、メジロマックイーンです。

ライスシャワー鞍上の的場均は、NHKの番組『課外授業 ようこそ先輩』の中で、この馬との思い出を涙ながらに語っていました。

その姿にまた、子供たちも涙を拭っていました。

一方、メジロマックイーンの鞍上は…おぉ!“ユタカパパ”です、武邦彦です。

8月に行われた葬儀では、これまで、どんなに苦しい時でも、どんなに嬉しい時でも、絶対に人前で見せることのなかった武豊の涙が、その偉大さを物語っていました。

「俺が今ジョッキーをやっていたら、ユタカよりも俺の方がモテたし、俺の方がたくさん勝ってるよ」と、語っていた邦彦さんが、息子に替わってマックイーンの手綱を取っています。

「さっきから、的場さんはマックイーンに(先に)行かせようとしてるんだよね。でも、武さんはそれに乗らないんだよね。ライスシャワーは有力馬をマークする形で勝ってきているから、ここもマックイーンに先に行って欲しいんだけどね」(イザイケ脩五郎)。

あぁ、この辺りの駆け引きも非常に見応えありますねぇ。

「でも、武さんの方も、このままってわけにはいかないと思うんだ。どこかで交わしておかないと、直線よーいドン!では分が悪いでしょう」(イザイケ脩五郎)。

ライスシャワーが前を行く形で一周目のスタンド前に入ってきました。

二頭とも落ち着いています。

実に落ち着いています。

さすがは長丁場に絶対の自信を持つ両雄、全く引っ掛かるようなところはありません。

大河原さんはどう見ますか?この勝負。

「そぉですねぇ~。ただ、二頭とも実績があるのは京都なんですよ。マックの方は有馬記念で一度走って2着だけど、ライスシャワーは十一戦して1勝ですからねぇ~。両方とも得意ではないしょう。鞍上も悩んでいると思いますよ、どこで仕掛けるか。えぇ」(大河原慶次郎)。

あぁ、そぉですねぇ。

メジロマックイーン、ライスシャワーといえば京都ですよねぇ。

長丁場は慣れている二頭も、中山の1コーナーを二度回るのは初めてです。

まだライスシャワーが先頭。

メジロマックイーンは、タケクニはいつ動くのか?1馬身半の間隔を保って第2コーナーを回っていきます。

二周目の向こう正面、的場がチラッと後ろを振り向いた。

ここでメジロマックイーンがジワッと動き出した。

さぁ、ここで番手が変わる…。

あっ…いや、いやっ、行かせません、行かせません、行かせません!

向こう正面の下りでマックイーンが動くのを待っていた、ライスシャワーと的場が加速。

なんと!ライスシャワーが向こう正面からのロングスパートに入った!

マックイーンも、マックイーンも、行くしかない。

スタミナ自慢の両雄のサバイバル決戦だ!

「これはライスシャワーの形だな。的場さん、してやったりだね」(イザイケ脩五郎)。

「スタミナ自体はライスシャワーの方があると思うしね」(大河原慶次郎)。

両解説者の意見はライスシャワー有力で一致しました。

3コーナーのカーブ、ライスシャワーがリードを4~5馬身に広げた。

しかし、メジロマックイーンには手応えはまだありそうだ。

さすがにこの辺り、冷静です武邦彦。

4コーナーを回って最後の直線に向いてきた!

逃げる、逃げるライスシャワー、懸命に的場が追う!

ここでステッキを抜いた武邦彦、メジロマックイーンが追撃態勢に入った!

重心を低くして、ライスシャワーが残り200を切った!

メジロマックイーンが差を詰める!

3馬身、2馬身と追い詰める!

しかし、ライスシャワーも死力を振りしぼる!

マックイーンの頭が上がった!

またしても、またしても、ライスの前に辛酸をなめさせられた!

3馬身のリードを取ってライスシャワーがゴォール!

10回戦【世紀のアイドル対決 芝2000m】

さぁ、東軍リードで迎えた10回戦は、“世紀のアイドル対決”と銘打たれました。

大歓声に迎えられ、先に姿を現したのは第一次競馬ブームの立役者として、社会現象を巻き起こしたハイセイコーです。

鞍上はもちろん増沢末夫。

そして、その大歓声をかき消すような、地鳴りのような声援が中山競馬場を飲み込みます!

公営笠松から中央入り、一つの時代を作った名馬オグリキャップです!

それにしても、凄まじい声援です。

「洋一くんじゃないですか?」(大河原慶次郎)。

「ホントだ!マジで!?おっどろいたなぁ!」(イザイケ脩五郎)。

あぁ…、あぁ!オグリキャップの鞍上にはなんと!福永洋一です!!

「長生きはするもんだね。グッフフフフフ」(イザイケ脩五郎)。

いやぁ、凄い。

それにしても、凄い声援です。

両解説者の声も、私自身の声すらも聞き取るのが大変な状況ですが、前を行くのはハイセイコー。

公営南関東から中央入りし、皐月賞制覇を遂げた“怪物”の人気は凄まじく、特に子供たちからのファンレターが多く届けられました。

引退レースとなった1974年の有馬記念では、勝ったタニノチカラではなく、タケホープとの2着争いを制したハイセイコーが大写しになるという珍事は、今なお語り草です。

また、引退後に発売されたシングルレコード『さらばハイセイコー』はオリコンチャートの4位を記録しました。

対するオグリキャップは言わずもがな。

公営笠松から中央入りを果たすやいなや、ペガサスステークスから毎日王冠まで破竹の重賞6連勝。

初めて立ちはだかった1歳年上のタマモクロスも最終戦では退け、スーパークリーク、イナリワン、バンブーメモリーら素晴らしいライバルとの激闘、そして、デビュー間もない武豊とともに競馬のファン層を女性にまで拡大させ、競馬の市民権獲得に大きな影響を与えた最大の功労馬。

1990年の有馬記念、感動のラストランは人の人生を変えるほど、強烈な走りでした。

あっ…雪です。

中山競馬場上空から雪が降ってまいりました。

余りの熱気に寒さを忘れていましたが、気温は下がっているようです。

舞い落ちる雪を切り裂いて、二頭が第3コーナーのカーブを切っていきます。

先頭は依然としてハイセイコー。

そのリードは3馬身から4馬身に広がったでしょうか。

オグリキャップ、福永洋一が気合いを付けています。

さぁ、“残り400”の標識を切り、オグリキャップが動き出します。

“あの有馬記念”と同じようだ。

内々をぴったり回りハイセイコーが最後の直線に向いた!

中山の直線は310m!

逃げるハイセイコー!追うオグリキャップ!

ターフビジョンが息子・祐一を捉えています!

鼻まで真っ赤です!

泣くな祐一!

焼き付けろ!その目にしっかり焼き付けろ!

これが天才・福永洋一だ!!

オグリキャップが残り二完歩で並び、一完歩で交わしたぁーっ!

11回戦【最強馬の称号を賭けて 芝2200m】

さぁ、西軍は天才から天才にバトンが継がれる格好で、武豊の登場です。

コンビを組むのは“英雄”ディープインパクト。

一方の東軍は2000勝ジョッキー増沢末夫から、2000勝ジョッキー岡部幸雄へ。

相棒はもちろんこの馬、“皇帝”シンボリルドルフです。

二頭が馬体を合わせる格好で一周目のスタンド前、坂を駆け上がっていきます。

さぁ、大河原さん、出てきましたよ。

「出てきましたねぇ~。でも、アンカーじゃないんだね。ルドルフ以外に誰がいるんだろう?まぁね、最近のファンはディープが勝つと思っているかも知れませんが、競馬界に存在する唯一の“絶対”がルドルフなんですよ。勝ちます。えぇ」(大河原慶次郎)。

「グッフフフフ。強気だなぁ…。お言葉ですが、ディープも走りますよぉ。でも、一騎打ちとなると、精神面でルドルフの方が有利かも知れないね」(イザイケ脩五郎)。

あぁ…なるほど、2コーナーを回って向こう正面、ディープの方がやや掛かり気味です。

無敗の三冠、GⅠ7勝馬ディープインパクトさえも子供扱いにするのかシンボリルドルフ。

ディープが出現するまで、無敗の三冠、GⅠ7勝馬といえばシンボリルドルフだけを表す称号でした。

あぁ!またちょっと、ディープインパクトが口を割って嫌がる素振り。

武豊がガッチリ抑えて下げようと試みます。

これに対して岡部は「それならば」と、2馬身のリードを取っていきます。

3コーナーのカーブ、手応え十分にシンボリルドルフが回っていき、ディープインパクトもようやく折り合いが付いた模様です。

残り400の標識を切り、間もなく最終コーナーを回り、運命の直線コースへと入ってまいります!

加速をしながらカーブを回り、シンボリルドルフがラストスパートに入いります!

大地を掴むような力強いフットワークで、「どっからでもかかって来い!」という感じだ!

これを追って、天を翔るような軽やかなフットワークでディープインパクトが跳んできた!

ディープだ!ディープだ!ディープインパクトがシンボリルドルフを追い詰める!

「ルドルフ!ルドルフ!!」(大河原慶次郎)。

馬体が合った!馬体が合った!馬体が合いました!

凄いレースになった!

凄いレースになった!

皇帝の誇り、英雄の意地!

負けられない岡部幸雄、譲れない武豊!

シンボリルドルフとディープインパクトの鼻面が合ったまま、両騎手の背中が水平移動しながらゴールに向かっていく!

凄いレースになった!

凄いレースです!

世界の競馬史上、最高のレースが、いま、完結ぅーっ!!

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