兄弟対決
明日、中京競馬場で『チャンピオンズカップ(GⅠダート1800m)』が行われます。
普段はもう一つ注目度の低いダート競馬ですが、1997年に格上げとなったフェブラリーステークスに次いで、2000年に新設されたダートGⅠ競走です。
前身はジャパンカップダートで、2007年まではジャパンカップの前日(2004年は同日)に行われていましたが、2008年からは開催日を繰り下げ、開催場所も東京競馬場から阪神競馬場に移されました。
さらに、2014年には中京競馬場で開催されることになり、名前もチャンピオンズカップに改められました。
あまりコロコロと条件が変わってしまうと、GⅠ競走に大切な重みというものがなくなってしまいますので、この辺で落ち着いてもらいたいものです。
さて、今年のチャンピオンズカップですが、注目の一つにアウォーディーとラニの兄弟対決というものがあります。
馬の場合、“兄弟”というのは、同じ母馬から産まれた個体をさしますので、毎年順調に種付け、受胎、出産が行われたとしても、通常年に一頭づつ(稀に双子もあります。)しか誕生しません。
近年1年間に生産されるサラブレッドは、およそ7000頭ということですが、この中でGⅠ出走にまでこぎ着けることができるのは、およそ1%と言われています。
この1%と1%が、同じレースに出走できるなんて、奇跡と言えるかも知れません。
しかし、実は先日(11月20日)のマイルチャンピオンシップでも実現していました。
7歳馬クラレントと、5歳馬サトノルパンです。
結果は残念ながらクラレント11着、サトノルパン18着でしたが、ゲートインしただけで凄いことです。
“兄弟対決”といえば、前年の菊花賞に続き、1994年に天皇賞(春)、宝塚記念を勝ち、国内最強の座に就いたビワハヤヒデ。
同年、3冠クラシックを圧倒的な強さで制したのが弟のナリタブライアンでした。
秋にはジャパンカップ、有馬記念で兄弟対決が実現することを、みんな期待していましたが、弟が3冠目を奪取する一週前、天皇賞(秋)のレース中にビワハヤヒデが故障を発生してしまい、史上最高レベルの兄弟対決は永遠の夢と化しました。
実現した兄弟対決で最も白熱したのは、2007年の有馬記念でのダイワスカーレットとダイワメジャーですかね。
妹ダイワスカーレットは3歳ながら2着に入り、6歳のお兄ちゃんダイワメジャーは3着でした。
今回のアウォーディーとラニには、これ以上の接戦を期待したいですね。
ちなみに、アウォーディー、ラニともに松永幹夫調教師の管理馬ですが、お母さんのヘヴンリーロマンスの主戦騎手を務めたのが同師です。
また、松永厩舎の丸内助手は、ヘヴンリーロマンス、アウォーディー、ラニの全てを担当しています。
その丸内助手いわく、アウォーディーは「一定の枠のなかでヤンチャするタイプ。怒られる状況だとわかっていると(ヤンチャを)しない」タイプだそうです。
ラニに関しては、その気性の強さ競馬界では有名ですが、「自分が一番強いと思っている。併せ馬だと隣の馬にかみついたりするし、人間を傷つけることもお構いなし。加減しないし、いつも全力。怒ると自分を抑えられない。ほえるとノーコントロール。アメリカでパドックをパスされたけど、何も特別扱いされたわけじゃない。他の馬が萎縮するから、アメリカ陣営からの要望だった」と、アメリカの関係者たちからも敬遠されたそうです。
しかし、「お母さんのヘヴンリーロマンスは大人しかったのに何故?」と、思う人もいるかも知れませんが、ヘヴンリーロマンスに関しても、丸内助手はこう言います。
「他の馬といると我を出して蹴りに行くことがあった」。
どうしても、我々は天皇賞(秋)のレース後、鞍上の両陛下へ向けられた最敬礼の際、ジッと立ち止まっていた姿があまりに印象的でしたからね。
今年のチャンピオンズカップは、偉大な母を偲びながら、兄弟対決を楽しみたいと思います。