“スプリンター”を探せ

今日は中京競馬場で、『高松宮記念(G1)』が行われます。

このレースは平坦コースの芝1200mで争われるということで、JRAのG1競走の中で最もスピードが問われると言っていいでしょう。

人間の陸上競技なんかでも使われますが、短距離を得意とする競走馬をスプリンターと呼び、長距離を得意とする競走馬をステイヤーと呼びます。

この二つのタイプを見分ける際によく例えられるのが、陸上競技の短距離走者と長距離走者の体型的な違いです。

筋骨隆々の短距離走者と、スラッとしたマラソンランナーを引き合いに出し、筋骨隆々の競走馬はスプリンターで、長距離のレースは不得手、細身の競走馬はステイヤーで、短距離よりも長距離が得意とされています。

「なるほど」と、僕もそう思い込んでいました。

しかし、もう25年ほど前になりますか、ミホノブルボンという筋骨隆々の競走馬がいました。

筋骨隆々ですから、当然スプリンターと言うことなります。

スプリンターのミホノブルボンにとっては、最適距離は1200mで、1600mまでは守備範囲、という先入観を多くの人が持ったことと思います。

そのミホノブルボンが2000mの皐月賞を勝つと、2400mのダービーは最後に失速すると不安が囁かれました。

ところが、延長された400mで、ミホノブルボンは後続を更に引き離しました。

それでも、さすがにスプリンターのミホノブルボンが、ステイヤーが得意とする3000mの菊花賞を勝つのは難しいのでは、とも思われました。

短距離走者がマラソンに挑戦するような物ですからね。

しかし、ミホノブルボンを管理する戸山為夫調教師が、こんなことをおっしゃっていました。

「競馬の短距離と長距離なんて、せいぜい2千メートルしか違わない。それを4万2千メートル以上違う短距離走とマラソンに重ねるのはナンセンス。競走馬と言うのは、本来みんなスプリンターなんですよ。スプリンターに必要な“スピード”と言うのは、調教では作れないんですよ。そもそもスピードのない馬は競走馬にはなれませんから。でも、ステイヤーに必要な“スタミナ”と言うのは、ある程度調教で付けることができます。(ミホノブルボンが)3000m走れるように鍛えてきたつもりです。」

そして、ミホノブルボンは菊花賞で2着に入線しました。

2着ですから、負けた事にはなるのですが、相手はあのメジロマックイーンを天皇賞(春)で下したライスシャワーですから、ミホノブルボンじゃなくても、ディープインパクトでもオルフェーヴルでも勝てなかったでしょう。

つまり、筋骨隆々のスプリンターのミホノブルボンは、トレーニングで3000mを乗り切ったのです。

この出来事は、僕の競馬観を大きく変化させました。

ミホノブルボン以前の僕なら、その体型からローレルベローチェを推していたと思います。

ぶ厚い筋肉の持ち主で、実績ではやや劣りますが、飛節、球節、つなぎの付き方もよく、台頭があっても不思議ない体型をしています。

20160323-00000069-spnannex-000-0-view

ローレルベローチェ

しかし、戸山先生のおっしゃるように「競走馬はみんなスプリンター」と考えると、スピードを生み出すために最も重要な“飛節”という部分が理想的な形状をしているミッキーアイルに惹かれます。

_20160327_083955

ミッキーアイルの飛節

その反面、華奢でちょっと見では短距離G1に出走してくるような体型には見えないウリウリにも注目したいですね。

この馬は、体型はどちらかと言うとステイヤー(まではいきませんが)ですが、気性がスプリンターと言うタイプです。

20160323-00000071-spnannex-000-0-view

ウリウリ

他にも様々な“スプリンター”が出走してきます。

各馬の体型、筋肉の付き方、パドックで見せる仕草などに注目して見たら楽しいと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です