馬を撮る
去る3月27日に中京競馬場で行われた『高松宮記念(G1)』の模様が、フジテレビ系列の『スーパー競馬』という番組で放送されていました。
その中で二度、気になる馬の動きがありました。
一度目は、岩田騎手騎乗のレッツゴードンキが本馬場入場から輪乗りに入る際、やや暴走気味にゲート後方まで駆けてきて、カメラの前でピタッと止まりました。
その仕草に岩田騎手が苦笑いをしていました。
原因は、突き詰めれば馬と人の間できちんとコンタクトが取れていなかった、ということになるのですが、外発的要因も恐らくあったであろうと考えます。
この岩田騎手とレッツゴードンキの件は、前後が確認できなかったので何とも言えませんが、G1出走経験豊富な彼女が興奮状態に陥ったのだから、何らかの原因があったのでしょう。
二度目は、レースに勝利したビッグアーサーが引きあげてきた時に、急に進路を変え、鞍上の福永騎手がこぼれ落ちてしまったことです。
こちらも、全景を見られた訳ではないので、断定はできませんが、下馬(げば=騎乗者が馬から降りること)した福永騎手がカメラに向かって「退いて、退いて」と合図していたので、カメラマンのいる場所か、カメラを構える姿勢か、カメラそのものに、馬を撮影するのに相応しくない何かがあったのでしょう。
もちろん、それでも福永騎手は馬よりも先にその状況を確認し、その事を馬に伝えた上で、次のアクションを想定して身構えておかなければいけませんでした。
それができなかったから、スタンド前に引きあげてきた福永騎手は、ばつ悪そうに「おっこっちゃった(落っこちちゃった)」と照れ笑いをしていたんですね。
しかし、こう言う出来事をカメラあるいはカメラマンのように、外発的要因のせいにして片付ける乗り手は何年乗っても成長しません。
馬に跨がり、手綱を握った以上は、自分と騎乗馬の安全の全責任を負う気持ちで乗らなければいけません。
とはいえ、周りが気を遣うことにより防げるアクシデントなら、それは周りが気を遣うべきですよね。
今回の場合は、「中京競馬場で行われたG1競走」というのが、一つのキーワードになっていると思います。
中京競馬場というのは、東京、中山、京都、阪神に比べG1競走が行われる回数が少なく、芝、ダートでそれぞれ1回のみです。
そういうこともあり、前述の4場はG1ならではのカメラワークと言う物が確立しているわけですが、中京競馬場ではまだ手探りな面があり、通常ないはずのところにカメラがセッティングされていたのではないでしょうか。
馬はカメラが恐いわけではないし、カメラマンが恐いわけでもありません。
あるはずの物がなかったり、ないはずの物があったりするとビックリしてしまうのです。
ですから、極力そういう状況を作らないように、撮る側が注意してあげるべきだと思います。
遊馬の馬たちは、そんなに神経質ではないので、特に写真撮影の際に気をつけて頂かなければならないようなことはありませんが、いないはずの所から出てきたり、茂みに隠れてカメラを向けるのはやめて下さいね。
茂みに隠れてカメラを向ける姿は、獲物を狙う肉食動物そのものですから。