遠くで汽笛を聞きながら(ヴィクトリアマイル(牝G1))
昨年の桜花賞、レース終了後に感情を爆発させるレッツゴードンキの女性関係者の姿がちょっとした話題になりました。
その女性はレッツゴードンキの調教助手を務める西原玲奈さんでした。
最近、藤田菜七子と言う女性騎手が騒がれていますが…、「一番騒いでんのはお前だろ」と言われそうですが、16年振りの女性騎手誕生のニュースは、近年オッサン達のつまらん損得勘定に支配されていた競馬界にとって、明るいニュースですからね。
明るいニュースはどんどん話題にした方がいい。
是非、今だけではなく、シワシワになるまで「ナナちゃん。ナナちゃん」と贔屓にしてあげてもらいたいです。
16年前、JRAデビューを果たした女性騎手は、決して恵まれたとは言い難い現役生活に10年と言う節目に幕を下ろしました。
10年間の戦績は590戦17勝。
17勝のうち9勝はデビューした2000年、6勝は翌年の2001年に挙げています。
騎乗機会も2000年は181回、2001年には179回騎乗していますが、2002年に一気に51回に落とすと、40、30、27、19、6、2、3…。
各厩舎を回り調教の手伝いをさせてもらいながら、競馬に乗れる日を夢見ていました。
しかし、どんなに調教で手応えをつかんでも、その馬にレースで乗るのは別のジョッキー。
「どう頑張ればいいの」
自問自答する日々。
今週もトレセンに残り、テレビで競馬を見る。
そんな彼女に、一人の調教師が暖かい言葉をかけてくれました。
騎手としてのこだわりを捨て、「馬が好きだ」と言う想いを抱きしめ、梅田智之厩舎の調教助手なることを決意します。
2010年2月28日。
シスタートウショウ(桜花賞)、ノースフライト(安田記念、マイルチャンピオンシップ)、フジキセキ(朝日杯3歳ステークス)、ビワハイジ(阪神3歳牝馬ステークス)、ヒシアケボノ(スプリンターズステークス)、ジャングルポケット(ダービー)、ヒシミラクル(菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念)らで数々のG1を制し、通算713勝を挙げた角田晃一騎手とともに、引退式に臨みました。
「初勝利した馬、怪我からの復帰後に勝った馬、5年ぶりに勝った馬、他にもありすぎて全て忘れられません。これからは、信頼できる梅田先生のもとで調教助手となりますが、恩返しできるようにいい馬づくりをしていきたいです。」
数少ない“いい想い出”を紡ぐように挨拶したその女性騎手が、5年後の桜花賞でこんなに素敵な笑顔を見せてくれました。
悩み続けた日々が
まるで嘘のように
忘れられる時が
来るまで心を閉じたまま
暮らしてゆこう
遠くで汽笛を聞きながら
何もいいことがなかったこの街で
『遠くで汽笛を聞きながら』
作詞:谷村新司 作曲:堀内孝雄 歌:アリス
どう頑張ればいいのか分からない中でも、頑張り続けた彼女が咲かせた満開の“桜”。
今度は新緑の東京競馬場で眩しく輝いて欲しいです。